【2017GW岡山1泊2日】倉敷・大原美術館
矢掛町で1泊したあとは朝から倉敷市内美観地区へ。
途中、井原鉄道の駅舎が見えた。微妙にレトロな雰囲気が素敵だ。
倉敷美観地区に到着するも、駐車場がなくて車で美観地区内を彷徨ってしまう。
狭いうえに、ジーンズが売りなのか思っていたよりお土産物屋さんは布織物系が多く、さらに新しく出来たスイーツのお店的な、どこにでもあるカフェが多くてわたしのイメージする倉敷のイメージと異なり辟易となってしまった。
さらに市営駐車場の前に「本日図書館・美術館休館」と書いてあり愕然とする。慌ててネットで調べると大原美術館も休館日となっていた。
休みを取っているので勝手に土日祝気分だったが、考えてみるとGW中の平日、しかも月曜日だった。確かに月曜日はたいていの美術館が休館である。思わぬ落とし穴に引っかかり、テンションガタ落ちのわたしは「大原美術館に行けないなら倉敷に用事ない!帰る!」となぜかキレキレ。
ごめんなさい…。
「とりあえず見に行こう」
とマイオットの声に励まされ、車を降りる。
美観地区の美観に目もくれず大原美術館へ直進した。
先に分館側に到着。
まばらながら人がいるので、これは開いているかも!?と期待。
分館前では、ロダンの顔のない人が出迎えてくれた。受付に美術館員がいたので開館が確信できた。
「閉館していると思ってました」と伝えたら「GW中なので特別開館してます」とのこと。やっぱり普段は月曜日休みだそうなのでラッキーだった。
大原美術館は日本で初めて創られた私立美術館である。日本の近代西洋美術家、児島虎太郎がパトロンの実業家、大原孫三郎に依頼されて欧州、フランスを中心に収集した絵画や彫刻が展示されており、規模もかなり大きい。
本館にはモネやアンリ・マティス、ピカソなどの近代西洋画、分館には青木繁や藤島武二、古賀春江ら、そして児島虎太郎など日本の西洋画家の作品が多数並び、そのほか古代エジプトやローマ、中近東の芸術品、陶芸、オリエント文化の発掘品などもあるため見応え充分だ。
大原孫三郎は倉敷を代表する「倉敷紡績」(クラボウ)の社長でもあったため、倉敷美観地区内のクラボウ記念館横にも大原美術館のチケットで入れる児島虎太郎記念館などが点在している。
倉敷が今も織物や染物、デニムなど服飾品の土産物の目立つ理由はやはりクラボウにあるのだろう。
わたしが初めて大原美術館に興味を持ったのは、もう十年以上前になる。当時、フィレンツェなどを旅してルネサンス芸術に触れ、聖書のテーマの中でも画家たちがこぞって描いた『受胎告知』の美しさに魅入られたわたしは、帰国してから徳島県鳴門にある世界最大の複製陶版印刷画美術館、大塚美術館に行き、言葉通り世界中の各時代全ての名画に出会った。その折、エル・グレコの『受胎告知』を見て、イタリア画家とはまた違う濃厚な筆遣いに興味を持ったのだった。
そして、彼の「受胎告知」を日本の中で所有している美術館があることを知った。それが「大原美術館」である。
日本の実業家が私的財産を投げ打って欧州の絵画を集めたり、また日本国内の西洋画家草創期を支えたことはあまりにも有名で、わたし自身も久留米の「石橋美術館」などで実業家の力をまざまざと見せつけられているが、その中でもエル・グレコを購入するした大原孫三郎の決断力は非常なものだと感じる。
実際に見ると、けして大きな絵ではないが迫力があってまじまじと見つめてしまう。聖母マリアの顔も大天使ガブリエルの顔もどことなくスペイン風で美しい。
何より、児島虎太郎がパリに出向いていた1922年に、たまたま売りに出たこの「受胎告知」を購入すべきだと大原孫三郎に言い、わざわざ写真を送って送金を依頼したその慧眼にも驚かされるし、写真を見てすぐに購入を決意した大原孫三郎の先見の明にも頭が下がる思いだ。この二人の見事な連携プレーにより、いま「日本でエルグレコの受胎告知が見られるのは奇跡だ」とまで言われるほどになったわけだから、その奇跡を間近で見れたわたしも感激ひとしおである。
しかし、実はわたしが大原美術館に来たかったのは、エル・グレコの「受胎告知」だけが理由ではない。
数年前、「楽園のカンヴァス」という小説を読んだ。大原美術館でキュレーターをしていた原田マハ氏の著書だ。
小説内で数点の大原美術館所有作品が紹介されているが、中でも大原美術館に勤めているという設定の主人公が一番好きだと書かれていたのがシャヴァンヌ(ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ)の『幻想』だ。
とても透明感のある青色が印象的なこの絵は、大原美術館の中でわたしも一番好きな作品である。
大原美術館には19世紀から20世紀を代表する有名画家の作品が多数集められている。日本の、それも首都からは程遠い岡山の片隅に世界的な名画を展示した美術館が大正時代にはすでに存在していたと考えると、改めて日本人の文化度と高さに驚かされる。
好きな絵といえば、「ムンクの叫び」で有名なエドヴァルド・ムンクの「マドンナ」も良い。この絵は「ムンクの叫び」の二年後に書かれたそうだが、ムンク独特の筆致で彼の女性観が顕著に現れている。
ピカソの「鳥籠」も小説『楽園のカンヴァス』に出てきた。色遣いが鮮やかで見るものをハッとさせる。
大原孫三郎に依頼されて欧州で絵画を集めた児島虎太郎だが、自身も才能溢れる西洋画をたくさん残している。
「和服を着るベルギーの少女」など、どこかモネなどを彷彿とさせる点画描法と、淡い色遣いが心に優しい。
大原美術館には現代美術もたくさん展示されている。
ジョアン・ミロ『夜の中の女たち』が妙に気に入ってしまった私たちは、額縁入りの複製品を購入した。背景のグラデーションも良いし、四角い顔立ちも可愛い。子供でも描けそうな絵だが、なんとなくオシャレでセンス溢れる。このあたりの現代美術は「インテリア」として納得できる。
ただ、ちょっとこの辺になると理解不能に…だけどこの絵、嫌いじゃないんだよなぁ(笑)
個人的に現代美術は一人でゆっくり見るより、誰かと「この絵は好き」とか「この絵のタイトル意味不明」とか「マジいみわからん」みたいなことを語りながら見るのが楽しい。
解説本もミュージアムショップで購入したのだが、猫の爪痕みたいな絵とかほぼ真っ黒に見える絵とか、マジでわたしにも描けそうなのに何億という価値があるんだろうなと考えると芸術の世界はやはり理解しがたい。
大原美術館は19世紀以降の近代芸術、著名な欧州画家の作品のほか、芸術的センスのない一般市民の我々には笑える素敵な現代美術もたくさんあるので、美術館なんて!と構えるより若いカップルでも楽しめると思ってデートの行き先に加えるのもオススメだ。
美術館は大人、それも年配の方が多く子連れではなかなか行きにくい雰囲気があるので、行くなら今のうちだ。妊活中に巡りまくろう。
そして倉敷美観地区。
綺麗だけど、ここ自体は福岡の柳川とか大分の湯布院とか、京都とか、いろんなとこにありがちな風景。街並み自体は古い建物を残していてお散歩するのに良いけど、中途半端なオシャレ感を出している服屋とかがなんとなく微妙でガッカリ。
なんていうか、紡績の街ってのもあってデニムとか推してくるんだろうけど、とにかく日本の観光地ってどこもかしこも同じような店ばかりで、同じような物ばかり売っていて、個性がない。
結局はお金使わないと楽しめないし、スイーツもジェラート600円とか高すぎ!
ってなわけで、倉敷というより鍾乳洞と大原美術館に行けて良かった岡山1泊2日。まぁ、近場だから目新しさがないのは仕方がないな。
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